部分入れ歯とは?
特徴から構造・素材・治療費まで解説
歯医者さんから部分入れ歯を勧められたけど、部分入れ歯ってどういうもの?部分入れ歯はインプラントやブリッジと何が違うの?見た目は自然なの?など、初めての入れ歯に不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
部分入れ歯は歯を失ったスペースを埋めて歯の機能を補う装置です。お口に合った部分入れ歯を装着することで、食べ物をしっかり咀嚼し(噛むこと)、飲み込むことができます。また、歯を失う前と同じように発音が可能になるので会話も不自由しないでしょう。そして歯が欠損している部分を補うことで見た目の審美面も補うことができます。
天然の歯の色や歯ぐきの色に近い「自然な見た目の入れ歯」を装着することで、歯を失う前と変わらない笑顔により自信を取り戻せるでしょう。
部分入れ歯の特徴
すべての歯を失った方が総入れ歯を使用するのに対し、自分の歯が1本でも残っている場合は部分入れ歯が適応されます。クラスプ(金属のバネ)やレスト(入れ歯の沈み込みを防ぐ装置)と呼ばれるパーツを残存歯(残っている歯)に引っ掛け、入れ歯を固定させます。
部分入れ歯の構造・素材について
部分入れ歯は床(義歯床)と呼ばれる歯ぐきの部分と、人工歯と呼ばれる歯の部分、入れ歯を安定させるためのクラスプやレストなどの支台装置から構成されています。
また、右側の一部分と左側の一部分というように床が分かれているような場合や、飛び石のように歯が欠損している場合では連結子という金属のバーで床を連結させることで入れ歯の強度を高め安定させます。
入れ歯の「歯ぐき」の素材とは?
部分入れ歯の床は、総入れ歯と同様に主にプラスチックでできています。艶やかで健康的な歯ぐきの色を表現できるので、天然の歯ぐきの色と馴染み、自然な色調に近づけます。また、プラスチックを使用するほか、部分的に金属を使用する場合もあります。
入れ歯の「歯」の素材とは?
総入れ歯の人工歯と同様に、硬質レジン歯と呼ばれるプラスチックや陶歯(セラミック)から構成されています。まれに金属の歯を用いることもあります。
特に部分入れ歯の場合は、隣り合う天然の歯とのバランスが大切です。できるだけ自然に美しく見えるよう、歯科医師や歯科技工士などの意見を取り入れ参考にすると良いでしょう。
クラスプ(金属のバネ)の役割とは?
部分入れ歯は、欠損している歯の両隣の歯を支えとし、クラスプという金属のバネをかけます。
バネを隣や周りの歯に引っ掛けるように固定することで、部分入れ歯が浮いてしまわないように支えます。
公的医療保険で使用されるバネは、主に2種類あり、針金のような細いバネ(コバルトクロム) や、金属の太めのバネ(金銀パラジウム合金・ニッケルクロムなど)を使用します。このバネの役割は大きく分けて3つあります。
1、維持[いじ]・・・部分入れ歯がはずれないように抵抗する働き
2、把持[はじ]・・・噛んだ時や着脱の時の揺れや負荷から支台歯を守る働き
3、支持[しじ]・・・入れ歯の沈み込みを抑え、歯ぐきや骨への負担を軽減させる働き
バネの太さはそれぞれ違うの?
人によって引っ掛けるバネの太さが違うのは、その人の口腔内の状態に合わせているからです。
例えば、歯2本分の小さな部分入れ歯であれば小さいバネを引っ掛けることで固定維持できます。しかし、多数の人工歯がある大きな部分入れ歯の場合は支える力も多く必要になるため、支えるバネも太いものを使用します。
また、入れ歯が安定しない場合は、太いバネや複数のバネを周りに引っ掛けて支えます。
なお、保険診療内のクラスプは金属を使用しますが、自由診療で作る入れ歯は金属のバネを使用しない選択肢もあります。
気になる治療費について
部分入れ歯は健康保険が適応されます。健康保険の割合が3割負担の場合、片顎(上下どちらか)で5,000円~15,000円程度です。
なお、現在(平成30年)の健康保険制度の負担額では、69歳までの方は3割負担、70~74歳の方は2割、75歳以上の方は1割です。(所得によって負担額が異なります)
自由診療でつくる部分入れ歯とは
自由診療の入れ歯は実にバラエティ豊かです。入れ歯の作製に必要な素材やお口の状況に合わせた入れ歯を選択でき、自分好みにカスタマイズすることも可能です。
素材や設計も自由自在。例えば金具のない入れ歯、ズレにくい入れ歯、温度を感じる入れ歯など、個人の希望に合わせた設計が可能なので満足度が違います。
もしも、初めて入れ歯を作製するなら、まずは保険の入れ歯を作ってみると良いでしょう。入れ歯の使い心地を実感できると、自分のライフスタイルに合った入れ歯が見えてきます。次に新調する際の入れ歯選びの参考にもなるでしょう。
あなたはどのタイプ?自由診療でつくる、部分入れ歯の種類
部分入れ歯はどのような種類があるのでしょうか。個性的な入れ歯をタイプ別にご紹介します。
気を付けたいお口のトラブル
お口のトラブルと言えば、まず思い浮かぶのは「虫歯」や「歯周病」でしょうか。
入れ歯は人工でできた歯なので虫歯にはなりませんが、入れ歯を支える歯や周囲の組織は虫歯や歯周病のリスクがあります。虫歯や歯周病のリスクを回避するために、歯を良く磨くことはもちろんですが、粘膜特有の疾患があることもお忘れなく。これからは、入れ歯を支える粘膜にも注目してみましょう。
お口の中を清潔に保つことは、虫歯や歯周病から残された歯を守るだけでなく、口臭やそのほかの全身疾患の予防にもつながります。
ここでは入れ歯に関するお口のトラブルについてご紹介します。
医歯薬学総合研究科・生体材料学分野
松本 卓也 教授