お口と身体の健康にとって重要な
【唾液】の6つのチカラとは?
唾液は私たちにとって重要な役割を担っています。食べ物を飲み込みやすくするのも唾液、口や舌を動かしスムーズに話すことができるのも唾液、虫歯を作りにくくする作用もあります。
唾液の6つの働きについてそれぞれ解説していきます。
1.消化を助ける
唾液にはアミラーゼという消化酵素が含まれており、食べ物の消化吸収を助けています。食べ物を胃腸に運ぶ前にお口の中で消化しやすい状態を作り、胃腸への負担を軽減しています。
そして唾液はよく噛むことで分泌量が増えます。よく噛んで食事をとる事は、栄養の吸収率も高めているのです。
2.抗菌作用
唾液には抗菌作用があり細菌やウイルスの侵入を防ぐだけでなく、傷を修復し回復を促進させます。
唾液の成分である、リゾチーム、ペルオキシターゼやラクトフェリンなどは細菌の増殖を抑え、細菌やウイルスの体内への侵入を防御しています。
唾液に含まれる「上皮成長因子(じょうひせいちょういんし)EGF」は、細胞を活性化し再生機能を助ける物質です。傷の修復を助け回復を促進させる作用があるため、医科や美容の分野でも幅広く応用されています。
ちょっとした切り傷や、すり傷を負った時にツバをつけたり、動物が怪我をした時に傷口を舐めて治すのも唾液の抗菌作用と傷の修復作用によるものです。
3.自浄作用
唾液にはお口の中の菌や磨き残しを洗い流す自浄作用があります。唾液は1日あたり約1~1.5ℓ分泌され常にお口の中を潤し洗浄しています。唾液の量は個人差がありますが、唾液が多いほど自浄作用が高くなり、虫歯や歯周病、口臭のリスクを減らす力も強まります
4.粘膜の保護と潤滑作用
唾液は天然のうるおい成分。唾液に含まれるムチンという成分が舌や頬の粘膜を保護するほか、咀嚼[そしゃく]した食べ物を包み込み飲み込みやすくしています。
会話をするときに、舌や唇を滑らかに動かしスムーズに発音ができるのも、唾液がお口の中を潤しているからです。唾液があるから、食事や会話も楽しめるのです。
5.虫歯を防ぐ働き(唾液緩衝能[だえきかんしょうのう])
唾液にはお口の中のpH[ペーハー]を一定に保つ働きがあり、お口の酸から大切な歯を守り虫歯を防いでいます。
虫歯の発生は細菌の出す酸によって歯の表面が溶かされることが原因です。食事をするとお口の中のpHは酸性に傾き、虫歯の原因である「酸」を発生しやすいのです。
唾液は酸性に傾いた状態を中和しpHを正常な状態(中性)に戻す作用があります。これを「唾液の緩衝能」と言います。
唾液の分泌量が高いと唾液緩衝能の作用も高いため、虫歯になりにくい傾向があります。
6.再石灰化作用
唾液の中にはリン酸イオンやカルシウムイオンといった天然のミネラル成分が含まれています。このミネラルの成分が虫歯の一歩手前の「脱灰[だっかい]」という状態から、エナメル質を修復し虫歯の進行から歯を守ろうとします。これを歯の再石灰化[さいせっかいか]と言います。
お口の中は酸によって起こる「脱灰」と「再石灰化」を繰り返し、微妙なバランスを保つことで虫歯を防いでいるのです。
医歯薬学総合研究科・生体材料学分野
松本 卓也 教授